[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
王都から歩いて半日の場所に、森に囲まれた小さな村がありました。村人達は大らかで夜明けと共に起きて日暮れと共に寝ます。森を切り開き土地を耕し、取れた作物は三日かけて王都まで売りに行き、僅かな儲けを村全体で分け合って暮らしてます。
貧しいけど家族のように暖かい村、そんな村でキジュは神官のロトに育てられました。
ロトはまだ三十歳で赤ん坊を引き取った当時は十五歳の若者でした、なんと今のキジュと同じ歳です。いくら神官とはいえ十五歳の若者に子育ては難しいはずで、それも赤の他人の子を引き取って育てるなんて信じられないこと。
キジュには絶対無理です。自分の面倒すら適当なのに他人の面倒までみるなんて、すぐ行き詰って野垂れ死にするのがオチです。
苦労かけた、というか今現在進行形で苦労かけてるのでロトにはいつか恩返したいと思ってます。
「…と初代のデュオ王は考えたわけです、人は子供を愛するあまりに評価を間違える……聞いていますか、キジュ? ……飽きたのですか、仕方ありませんね、少し早いですがお昼にしましょう」
ロトは本を閉じて棚にしまった。キジュを神官にする心算なのか毎日勉強を教えてくれる、今日も朝食後からずぅ~っとだ。神官は難しい試験に合格しないとなれないから教わる量も半端でない。
神官試験は無料で、身分も年齢も関係なく誰でも受けることができる。
「……飽きた…ってまるで幼い子供みたいに言わないでよ。ちゃんと聞いてた、『生まれも育ちも関係ない、本人の能力と気質で王は選ばれるべきだ』でしょう、何度も聞いたから覚えてるって」
「はいはい、何度も聞かされたから飽きてしまったと。別に怒ってませんよ、午後一で村長に呼ばれているので私が早めにお昼を済ませたかっただけです」
まるで駄々っ子扱いだ、十五歳になって今年成人したっうのにいつまで経っても一人前と見て貰えない。――まあいいけどね、下手に立派な大人と認められたら独立しなきゃいけなくなって困ってしまうだけだし。
小屋にテーブルは一つしかなく勉強も食事も同じテーブルを使う、キジュも立ち上がり勉強道具を片付けた。
「呼ばれるなんて珍しいね、誰か病気にでもなったの?」
農民と比べ神官の身分は高い、試験に合格して神官になった日から貴族と同等の身分が与えられる。一番下の身分である農民が結婚式と葬式、怪我以外で呼びつけるなんて恐れ多くて普通はできないこと。まして村は貧しくて、ロトが来るまでは神官なんて呼びたくても呼べない状況だったのだ。
国で一番偉いのはもちろん王様だ、神に選ばれたため神子でもある。二番目は大神官、神子の代理ができる立場だし宗教国家だから。三番目は領地持ちの大貴族と福神官。四番目が神官補佐と続く、半年に一度行われる昇進試験に受かり大出世した神官達だ。五番目が神殿騎士、神官と騎士の資格両方を持っているから。六番目が神官と貴族、王城の騎士。七番目が平民で、一番下が農民。農民は開拓した土地を自分の財産にできる代わり身分を平民より低く据えられてる。
神殿へ神官の派遣を依頼すると馬鹿高い謝礼を請求される。稀にロトのように修行のため神殿を出て、王都や村に住居を構え孤児を育てたり、知識を生かし怪我や病気の治療をする神官がいる。彼らは交渉しだいでは安い謝礼でも引受けてくれるが、態々こんな小さな村まで来てくれるはずもなく。
ロトが村へ来たとき村人達は大層喜んだらしい、空いてた小屋を総出で直し無料で提供してくれた。森の中へ少し入った、川の近くの静かで綺麗な場所に建つ小屋だ。
小さな畑も作ってくれた。自給自足には足りないがある程度は賄え、ロトとキジュが勉強の片手間に耕せる程よい大きさ。
「ええ、何でも村長から村人達に話があるそうです」
「…へぇ―――っ、そうなんだ」
慣れちゃえば身分の高い神官でもただの村人扱いになるんだ。
昼食を作るのを手伝うため隣に並ぶ。幼い頃、大きくて逞しく頼りがいがある大人だと思ってたロトが、本当は小柄であることに気づいたのは背を追い抜いてから。
透き通る絹の金髪に、湖のように澄んだ青い瞳、縁取る睫は長く大きな目を印象つける。肌は純白、唇は艶やかな桃色、女性よりも華奢で綺麗で可愛いらしいロト。比べキジュは中肉中背で茶髪に茶目と、どこにでもいそうな顔だ。
バタン! 大きな音を立てて突然、入り口の戸が開く。
「助けにきたぞっ! 悪神官め覚悟しろっ……あれっ?」
≪0-1|目次|1-2≫