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「三十五年前、今のサヤ大神官が福神官になったことから全てが始まりました。この三十五年の間に神子と大神官だけでも六人が死亡してます。数が多くて少し不自然だと思いませんか?」
毎年数多くの者が神官になり修業に励むなか、生涯を賭けても福神官まで出世できる者は極一握りの優秀な者だけ。そんな福神官に二十二歳の若さで辿り着いたサヤ福神官は、周りから天才と持て囃され一目置かれる存在となった。
一時期は神子や王までが全面的に信頼し、進められるまま王の政略結婚を受け入れたという。三十四年前のことだ。
結婚するっうことは王が神子の資格を失うことである。
「今考えれば愚かな選択ですが、当時の人々がサヤ福神官にかけた期待や信頼の大きさを物語っています」
次の年、三十三年前にアテン神子が誕生すると、他の福神官達を差し置いてサヤ福神官が教育係りに任命された。責任重大でとても名誉な役目だそうだ。このままいけば将来の王補佐の地位も約束され、次の大神官になるのも決まりだろうと噂されてた。
ところがサヤ福神官はアテン神子の面倒を一切見ず、当時まだ二十一歳で五等神官だった今のケイト神殿騎士総括に押しつけた、本人は偶に顔を出す程度でアテン神子を抱くこともなかったらしい。
神子を蔑ろにする態度は当時いた二人の神子の顰蹙を買う。サヤ福神官を首にして、実際に面倒を見てるケイト神官を教育係りに引き上げようと考えた。しかし突然、神子二人と当時の大神官が立て続けに亡くなり、教育係の入れ替えは宙に浮いてしまった。
疑惑は当然サヤ福神官に向けられた。だが調べても証拠が出ず、神子がいなくなったため教育係から外すこともできなかった。ただ疑いのある人間を大神官に選ぶことを阻止するのみに留まった。
「別に二十四時間一人で面倒見ろと命令されたわけじゃないんでしょう、神官が大勢いるんだから手伝って貰えばよいだけだし、ずるい話し世話は人任せにして、自分は側にいるだけとかさ」
教育係りとして形だけでも整っていれば誰も何も言わなかったと思う、出世の道が閉ざされることもなかった。そうすれば神子二人と大神官も死ななくて済んだはず、今更だけど。
ロトは目線を上げ遠くを見て一瞬何かを思い出したように笑った。
「新しく選ばれた大神官は、残された神子が何も喋れない赤子ということで、これからは元神子であった王に指示を仰ごうと考えました。もちろんサヤ福神官は反対しました、王の息子、今のシュル王補佐を王城から神殿へ移動させ勝手に神子の遊び相手に決めてしまいました。二十九年前のことです。当時、四歳だった息子のことを考えて王は神殿に一切口出ししないと言明しました」
「えっ? 何故?」
コージェが思わずっう感じで声を上げた。息子が神殿にいたら尚更口出しそうなものだが。
「人質みたいなものです、王城から神殿に連れて行くことでいつでも殺せることを証明しました。そして王に恩を売るためでもありました。継承権のない王子は国にとって無用の存在、いえ逆に将来、母の国を後ろ盾に神子と王位争いしかねない危険な存在です、いつ暗殺されてもおかしくない立場でした。神子の遊び相手にすることで存在理由を作り安全を確保したのです」
暗殺、たった四歳の子供を…。建国から百二十年ぐらい経ってても人というものは変われないのか、国のため権力のためと弱い立場の者を殺そうとする。建国以前と全く同じだ。
「神殿内の勢力は一気にサヤ福神官に傾きました、神子を差し置き、神殿の主は自分だと言わんばかりの態度だったと聞いてます。色々やってくれたらしいです、それまでは寄付制だった神官の派遣を料金制に変えたり、お金さえ積めば神官になれる制度を作ろうとしたり、当時の大神官が頑張って対抗してくれたお陰で今の程度で済んでますが」
お金でなった神官なんて尊敬できないし、結婚式や葬式を挙げて貰っても有難味も何もない。終いにはそんな神官のいる神殿や仕える神子まで侮蔑の対象になるんじゃないか。
その頃は出世してたケイト福神官の過去を捏造し卑しめたり好き放題だったらしい。
「しかし頑張り過ぎたんですね、二十四年前に大神官は急死しました。当然サヤ福神官が疑われ調べられましたが犯人は別にいるという形で決着しました。犯人とサヤ福神官の繋がりを示す証拠はどこにもありませんでした」
今度もサヤ福神官は大神官になることはできなかった、建前はどうであれ周りは犯人だと疑っていたのだ。
「その頃からサヤ福神官の権力は陰り始めます。赤子だったアテン神子が成長したことと優…秀な……神官達が現れたから…です」
突然ロトの歯切れが悪くなった、気のせいか視線も彷徨ってる。
「そりゃ説明しずらいよな、代わりに説明してやろーか?」
ドジャは意地悪そうに笑い、ロトは赤くなって俯いた。何だろう凄く意味ありげだ。
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