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「六年前、アテン王が突然、寝込みます。表向きは病気ということになっていますが実は毒を盛られました。幸い死ぬことは免れましたが体が弱り、ベットから起き上がることができなくなりました。急遽、十五歳だったウィート神子が王代理をすることに決まり、シュル福神官も王補佐代理となりました」

 当時、二十七歳だったアテン王のところへ唐突にサヤ大神官が政略結婚の話しを持ち込んだ、だが相手をする気がないアテン王は話しも聞かず追い返した。暫く経ちいつもの従僕が入れたお茶を飲もうと口に含んだところ舌がピリッと痺れた気がして吐き出した。毒を飲まずに済んだはずだが全身が痺れ倒れてしまった。

 わずか数滴で人が死ぬ猛毒がお茶に入れられてたそうだ。無色無臭、体を麻痺させ一瞬で心臓を止めてしまうが後は何も残らない最悪な毒。

 特殊な方法でしか手に入らないとても高額な毒だそうで、一介の従僕が持てるような品物でなかった。取調べを受けた従僕は「人質を取られて仕方なくやった」と白状したが黒幕については頑固に口を割らなかった。

 黒幕はサヤ大神官だと確信するが、保身の天才っうか保身のためなら形振り構わず、他人を身代わりにしてでも助かろうとする心根のせいか証拠が見つけられなかったらしい。

 一年前、ウィート神子が王に即位する日、アテン王は自分で歩けるまで回復してた。そのまま全快に向かうと誰もが思い安堵した。だが即位式の直後、無理が祟ったのか倒れそれっきり目を覚ますことはなかった。

「サヤ大神官は隠れ育てられている神子がいることを知ってました。そして神子の年齢を十二歳と勘違いしていました、これは十二年前に急死した当時の大神官に繋がります。秘密があることに気づき口を割らすために拷問して殺したのでしょう、部下達に神子と思しき少年を襲わせているのが昔の殺人の証拠となりました。今回ドジャさんがばらさなければ十五年前に神殿を出た私と神子の関係を気づかれなかったはずです」

 キジュが今まで無事で、のほほんと暮らしてこれたのはサヤ大神官が年齢を勘違いしてたお陰。ただ…身代わりとなって死んだ子供達がいたことも悲しいことだが現実である。

 ケイト王補佐は神殿騎士総括に就任し、今から三十五年前までの間の神殿に関係する事件を全て一から調べ直した、事件を知っている者全員に会い、ときには説得し、ときには脅迫し、洗い浚いどんな些細なことでも関係ないと思われることまで全て聞き出した。

 サヤ大神官の仲間や部下と思われる者達の下へ、神殿騎士や王城の騎士、または普通の神官まで潜り込ませ動きの全てを見張り、執念とも言える熱意でサヤ大神官を追い詰めてった。ここ一年で進退きわまり神殿内でサヤ大神官に味方する者はいなくなった、それでも隠されている神子を殺すことができればまた状況が変わると信じてたのかもしれない。

 その場にいて影からドジャの話しを聞いてたサヤ大神官は、ロトが育てた青年こそ神子だと気づいた。腕がたつロトが側にいては暗殺は無理。神子は既に成人しており神殿に戻るのも秒読み段階、だから大神官は神殿と祖国に見切りをつけ身につけられるだけ財宝を持って逃げだした。

 今まで懇意にしてた貴族達に隠し育てられてる神子の存在を公にし、『貴族による王制に戻すための革命』と理由になるのかならないのか解からない理屈をつけ一緒に戦う約束を交わす。

 大神官が村にいたのは貴族達を信頼させるため。貴族達が神子が隠れてる村を襲うため集まるのを待ち侘び、全員が集まったと知ると彼らを目眩ましと時間稼ぎに使い、自分はその間にすたこらさっさと隣国へ亡命してしまった。

 隣国の王家と何らかの繋がりがあるそうだ、だから政略結婚など整えることができた。

 しかしここでサヤ大神官は致命的なミスをする。自分が整えた政略結婚により隣国の王家と血の繋がりがある人間、シュル王補佐がいることを忘れてたのだ。国の中心にいて地位も名誉もある最高権力者と、身につけられる財宝だけを持って着の身着のまま祖国を逃げてきた人間。国の判断としてどちらの味方をするか考える必要もないこと。

「神殿に居場所がなかったサヤ大神官は非難場所として偽神官の元に身を寄せていました。『今度こそ神官になれる』 と騙し良い様に使っていたらしいです。ドジャさんの話しを聞いた時点で足手纏いと判断し厄介払いにぶつけてきたのです。……大神官と一緒いた神殿騎士は動きを見張るため潜り込ませていた間者です。大神官に同行していたそうですが隣国の国境で入国を認められず置いて行かれたそうです……隣国の思惑による措置でしょうね」

「えぇーっ、なんなのそれ?」

 大神官は今、隣国において犯罪者として捕まってる。大神官への対応を隣国ではとっくに決めていたのだ、神殿騎士を巻き添えにしては後々問題になると判断したらしい。

「今、ケイト神殿騎士総括がサヤ大神官を引取りに隣国へ向かっています。しかし良くて処刑に立ち会えるか、悪くて死体に対面して終わりでしょうね」

「へっ、なんで? うちの神官なのに、隣国は関係ないじゃん」

「あのサヤ大神官が一目散に隣国へ向かったのは、自分は高待遇で迎えられる自信があったということです。つまり隣国が公にされたくないことを知っていた可能性が高いです。そんな人間を罪人として引き渡したら、あることないこと喋られると普通は考えます。罪をでっちあげ両国立ち会いのうえ処刑が一番無難でしょう。こちらとしても連れ帰って処刑と決まっている人間を、何が何でも生きたまま引き渡せとは言い辛いですし。隣国を信用していないと取られかねませんから」 

「ふぅーん、そういうもんなんだ?」

 サヤ大神官が助かる方法は、繋がりも何もない国へ逃げ人生を一からやり直すこと、それしかなかったのだ。



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