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夜明け前ロトに起された。いつものように起きようとしてベットの端に腰掛け……ん? 端がない、手足を伸ばして探っても何故か届かない。変だ、壁際に転がってたとしても足先なら届くはずなのに。――ハッとして慌ててその場に座り込む。そうだ、ここは小屋でなく神殿だった。
昨日の夜、寝室だと教えられた部屋も無駄に広く、『何人で寝るの?』と聞きたくなるほど大きなベットがあった。両腕を真横に広げても両端にまだ人が寝られるほど大きい。
ベットの上を四つん這いで移動するなんて始めての経験だ。
「神殿は聖堂で朝の祈りを捧げます、神官全員が集まるので急ぎましょう。暫くは証の痣を見せていたほうが良いと思います」
ロトか用意してくれたのは頭からずぽっと被るロープ、厚手の生地で色は白、痣を見せるため襟なしで胸元が大きく開いてた。少しスースーして心許ない。胴回りは細く裾は広め、襟刳りと袖口と裾に金と銀の複雑な模様の刺繍がある。
髪をそのまま垂らし痣の邪魔にならないよう肩までの長さに整えられた。
ロトの着ている神官服も形こそ今までと一緒だが立ち襟と袖口部分に金の刺繍がある。腰に革ベルトをつけ剣を下げてた。
「うわっ、髭がないっ!」
談話室か会議室と思った広い部屋は神子の、つまりキジュの居間だそうだ。規模の大きさに呆然としたのだがロト達の寝室も居間に続いてると聞き、ちょっと無理矢理だけど納得した。
準備を整え先に居間で待ってたドジャを見た途端噴出す。胡散臭そうな中年の熊男が三十そこそこの人当たり良さそうな美男子に大変身してたのだ。無精髭を剃り髪を頭の後ろで一つに纏めただけなのに醸し出す雰囲気が全く違う、人の見た目ってこんな簡単に変わるもんなんだと感心する。
思ってたほどごつくなく細身で灰色の神官服が良く似合う。ギジュが着てるのと同じような形の神官服で、細い胴から裾に広がるラインがドジャの背の高さと男らしさを強調し惚れ惚れする。前の姿を知らなければ神官になるため生まれてきた男と信じ込んでいた。ドジャも立ち襟と袖口に金の刺繍があった。
ドジャもロトと同じ福神官だった、優秀らしくドジャも六年で福神官に出世してる。もっとも福神官になった途端、神殿を逃げ出したらしいが。
「ちっ、何見てやがる!」
口の悪さと頬を染めてそっぽを見る照れ方は元のまま。
「さあ急ぎましょう」
両開きの扉を開いて待ってるロトに手で先に行けと急かされた。えーっと先頭を歩かないといけないのかな、聖堂までの道順知らないんだけど。
キジュの左右、一歩ほど斜め後ろにロトとドジャを従えて歩く状態だ。
「神官に会っても頭を下げない、立ち止まらないで素通りしてください。聖堂までの廊下で会う神官達と神官補佐以上は、神子が昨日戻ったことを知っています」
聖堂までに会うのは、掃除してくれたり食事を作ってくれるなどキジュ達のこれからの生活一切の面倒を見てくれる者達で、仕事により十等神官から神官補佐まで様々な人がいるそうだ。
途中でキジュ達に気づいた神官は壁際に寄り頭を下げ道を譲る、なんか申し訳ないような気もするが通り過ぎないと彼も動けない。
「戻ったこと知らなくても神子がいることは知られてるよね?」
まさかと思うけど、神官達はウィート王以外の神子の存在を知らないってことないよね。
「さあ、どうでしょうか? 貴族達が大掛かりな処分を受けてますのでその原因も知れ渡っていると思いますが、世間に疎い神官達ですからね知らない可能性もあります。次の角を右です」
ちょっと待て、いないと思ってた神子が突然目の前に現れたらどんな反応するか、考えるだけでも怖いんですけど。冗談だよね、ロトは面白がってからかってるんだよね。
ザワザワと前方が騒がしくなってきた、聖堂に近付いたのだ。緊張して心臓がドキドキ高鳴る。逃げ出したい、だけど逃げられない。
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