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 予定より遅れに遅れて治療院へ辿り着いた。治療院は門を入って直ぐ右側、道に沿って建てられた細長い建物で、大きな入り口が五箇所開かれてた。

 大勢の人が入り口から治療院の中へ飲み込まれていく。キジュ達も入ってく人の後に続いた。中はキジュ達が通った入り口と隣の入り口が設けられている大きな部屋だ。奥行きのある広々とした部屋で、奥のほうには神官達が等間隔で椅子に腰掛けてた。人々はその神官達の前に列を作って並び自分達の順番が来るのを待ってた。

 よく見ると座ってる神官達の直ぐ後ろに小タンスが置いてありそこから道具や薬を取り出してるみたいだ。

 人の列を避けた場所に立ち神官達の様子を観察する。治療院の神官達は真面目で忙しいっうことを抜きに考えたらなんの問題もなさそう。

「神殿外で修業してる神官って大半が王都にいるっう話しなのにまだ足りないのかな」

「えっ、何がですか?」

 独り言のつもりで呟いたのにロトに聞き返されて困った。

「いやほら、治療にきてる人が凄くいるからさ、神殿を出て王都で住んでる神官の数が足りないのかなって」

「ああ、そういうことですか。神官でも位によって治療できる範囲が変わってきますから数だけ多くても駄目なのです。王都に居を構えている神官の殆どが怪我の治療ぐらいしかできないと思います」

「へっ? …だって……あっ、そうかロトは福神官か…」

 ついロトを基準に考えてた、ロトはなんでも知ってたし、病気でもなんでも治療できた。

「それに治療費が結構高くてな、個人の裁量に任されてるんだが後でとんでもねえ金額を請求されることもある。だから神殿に来たほうが安心なんだ」

「へぇー?」

 前にロトから教えて貰ったことがある、神殿では薬草を大量に纏め買いできるから低い金額で治療できるが、少量ずつしか買わない個人だと割高になるって。

「ひやかしはお断りなんじゃがのう、手伝いに来たと言うなら別じゃが、猫の手も借りたいほど忙しいのでな。神子側近のお二人なら裕福な奥様方が先を競って並ぶじゃろうて」

 突然、声をかけられ振り向けば小さいっうより細い体で腰が曲がってるから小さく見える老人がいた。神官服を着て襟に銀の刺繍があるから神官補佐? 朝、聖堂にはいなかったよね。 

「ゲッ、まだ生きてやがったのかクソ爺? 俺は治療なんてできねえぞっ!」

 ドジャは思い切り顔を歪めて美形が台無しになっているしロトの顔も引き攣ってる。老人の神官補佐は貶されているのに顔を皺だらけにしてご機嫌そう。

「神子側近が人前でクソ爺とはいただけませんのう。なあに大丈夫じゃ簡単な治療じゃで裸の胸を摩ってやるだけだからのう」

「………?」

 そんな治療は見たことないけど。

「おや可愛らしい神子様じゃ、昔のロト殿を彷彿とさせるのう」

 何が楽しいのか一人で話して一人で笑っている。ロトが後退りながらキジュを背中へ隠す。数歩進んだところで向きを変えキジュの腕を掴み一目散に出口へ向かった。振り返ってみるとドジャは苦虫を噛み潰したような顔で「またな、クソ爺」と挨拶してるし、老人の神官補佐はこちらへ向かってニコニコと手を振っていた。別に悪い人には見えないんだけど。

「いいですかキジュ、彼に近付いてはいけません。姿を見かけたら逃げてください」



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